ミャンマーは日本の1.8倍の面積で、人口は5100万人と東南アジアでは大国です。しかし、120年間のイギリスの植民地を経て、1948年アウンサン将軍による独立後、2007年の軍政による民主化運動を武力鎮圧したことで西側諸国から経済制裁を受け、経済は疲弊し、一人あたりのGDPは日本の1/30と貧しい状態が続いています。また、道路や電気、上下水道のインフラが未整備で、5歳未満の乳幼児死亡率は日本の17倍と、衛生環境も劣悪です。
土のうによる道づくり
私は、建設会社を定年退職後、先輩からミャンマーの道づくりを応援してくれとの要請があり、NPO「道普請人」のシニアエンジニアとしてミャンマーに赴くこととなりました。これは京都大学の木村教授が主宰しているNPO1で、おもにアフリカで活動しており、新たにミャンマーの田舎で村人といっしょに道づくりを始めるものでした。このNPOの特徴は、政府開発援助のように大規模・最新技術を用いたものではなく、安価で、かつ、地域の方々が自分たちでメンテナンスが可能となるように日本古来の技術である土嚢を用いて道を築造します。土嚢に少量のセメントを混ぜた現地の土を入れ、締め固めることで道を作ります。2014年から2018年まで活動し、村人とともに、土嚢を用いた農道や歩道橋の築造に従事しました。
浄水施設建設寄付活動2へ
私は、地方のチョンチャイ村の村長宅に泊まり込み、農道整備の従事中に、発熱と猛烈な下痢に襲われました。鳥の腸内にいるカンピロバクターによる食中毒でした。村には病院もなく、病院がある最も近いピャポンまでは船で半日かかります。村の初の病院開設準備で同じく村長宅に泊まり込んでいたピョー医師が診断し、無料で薬を処方してくれ、事なきをえました。
そこで、きれいな水の確保、水問題がもっと大きな問題と気づき、お世話になった村人やピョー医師へのお礼に、新設される病院に水処理施設を建設寄付することを決意しました。
ミャンマーの多くの村では公共水道がなく、雨水・池水・河川水を利用しています。新設されるチョンチャイ病院でも、河川水を使わざるを得ない状況でした。膜処理など高度な処理システムとすると村人では維持管理ができません。そこで、PAC凝集沈殿➡砂と炭による濾過➡塩素殺菌のシンプルな処理システムを採用しました。処理水はヤンゴン国立衛生研究所での化学的生物学的検査に合格して1日10トンの浄水の供与を開始、飲用の他、手術やリネン洗濯などに供されました。そして毎月のジャーテストと水質検査の維持管理を行いました。
チョンチャイ病院の浄水施設の完成・維持管理状況を見て、多くの方から浄水設備設置の希望がよせられました。そこで新たに2つの学校に浄水施設を建設寄付することを決めました。日本の多くの方々にミャンマーの水の現状を知っていただくとともに、ご支援をお願いしたく、クラウドファンディングにより120万円の浄財により着工しました。このプロジェクトは2020年4月にほぼ完成し、さらに、アウンサン・スーチー率いるNLD国会議員から他の学校への展開を依頼されていました。しかし、コロナパンデミックによる緊急事態宣言発出により渡航ができなくなり、さらに、2021年2月の国軍によるクーデターによる戒厳令で入国と地方での活動が不可能となっています。現在、浄水施設は村人と学校の先生方により維持管理されて給水されていますが、一刻も早く内戦が収束し、プロジェクトの完遂とさらなる展開を望んでいます。
堀内 治 妙見東在住
建設会社定年退職後NPO「道普請人」3としてミャンマーで道づくりの後、個人で浄水施設建設寄付を始める。
映画「荒野に希望の灯をともす」の用水路建設の中村哲先生の足元にもおよばないが、微力でも彼につづきたい。
(参考)
- https://ja.wikipedia.org/wiki/ミャンマー ↩︎
- ミャンマーの無水村の子供たちにきれいな水を贈りたい!https://readyfor.jp/projects/Myanmar-CWRM ↩︎
- 道普請人 https://coreroad.org/ ↩︎
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