小生は奈良県桜井三輪の生まれで三輪山は杉・桧・松で覆われた神山で大神神社の周辺を中心に神域として縄張りがされていて、その中には入れないが、そこを除いた所は柴刈りが出来た。そんなことで杉・桧・松等の花粉には慣れていたのか「花粉症」と言う言葉は無かった。

ところが10年ほど前から広がりだしたのか、日本国中が特に春は「花粉症」でマスク姿の人が多くなった。 桜井は近くの山から切り出された木材の集積場所として栄えた町である。それが萎えている。その時、日本の林業が全国的に萎え山の世話をする人がどんどん少なくなり人工林が手つかずで放置されていると。
その主な原因が、2012年にTPP(環太平洋経済連携協定) その主な原因が、2012年にTPP(環太平洋経済連携協定)が立ち上がって、これに参加した国の貿易を低関税にして後には無関税にと。そんな事から、日本の林業の材木が外国特に東南アジアやロシアやカナダ等からドンドン輸入され、日本の林業が「TPP」で立ち行かなく成り、人工林の世話をする人が居無くなった。その結果、放置された「桧・杉」の人工林が至る所に出来た。そして外国から木材の輸入が激しくなり安いから日本の林業は壊滅的に萎えた。今は人工林の世話をする人も無く、『間伐』や『枝打ち』も無く放置されている。その結果、枝や葉っぱがそのまま放置されて森林の枝から出る『花粉』は出放題で『花粉症』はほぼ全国に広がる事は当然と言える。
林業は芸術

日本の林業は単に「木材」を作ると言うのでなく「材木」を作る事が「林業」なのだと。加工して板や柱に「節穴」が無く、見た目にも「美しさ」を感じさせる物を。成長の中程で杉の「枝打ち」をしておくと、その切り口を表皮が隠してくれる。床柱なども木の表面に割り箸程の凹みを一面につけたなめらかで美しい柱があるが、割り箸程の長さのプラスチックの棒の両端を細く削った物を一本の木表皮にできるだけきれいに並べてしばりつけていく。それが柱にきれいな凸凹をつけられる。京都の周山街道の途中に中川村と言う所が有って、京都へ出る山道の途中に有る小さい滝の砂が柔らかで細かい事から手の平らに持って皮を磨いていく。光沢をもった美しい床柱ができる。また「台杉」と言ってかなり太くなった杉を地面から50cm位の所で切って育てると切り口近くから細い枝を出す。数年すると高さの違う細い丸太の真っ直ぐなのができる。またそれを切らずに育てると庭園や前栽の飾りとして植えてその変化を楽しむと言った使い方の物もできる。つまり日本の林業は「木材」を作るだけでなく、「材木」を造って居るのだ。だから手間暇が掛かり値段も高くなる。表皮も綺麗に剥いで「杉皮」や「檜皮」として多用に使う。日本の林業は美術的・芸術的だと言える。
外国の木材は日本の林業のような手間は掛けていないだろう。熱帯で多雨の東南アジアから来る木材は質が荒い。その代表が「ラワン材」。日本の材木は四季という気候の変化で木質がしっかりして居る。最近、そんな日本を見ようと来る外国の観光客が木造建築や木工品を見て『素晴らしい(ブラボー)』と叫ぶ人が多い。この「宝物」を放り捨てて金儲けに走るのは「愚の骨頂」と言うのだ。昔の家は100年をはるかに越えているものが一杯ある。三輪の家は100年に成るが今までの台風や地震に充分絶えてきた。他の資料によるとコンクリートの耐用年数は60年位、(42年説あり)や、鉄製は50年だと言う説がある。
今修理が終わった薬師寺の東塔もNHKのTV番組の『プロジェクトX』で何度か部分的な修理を繰り返し来たのだろうが1300年前の木造建築物が今だに建在だと。
シロアリは天才
三輪の納屋に素麺で使った木の板が残っていてシロアリに食われたのが一杯出て来た。捨てようと思ったがバーナーで焦がすと人間の力では到底出来ない模様が出て来た。それに薄い板から諺や俳句の文字を切り抜いて張り付けると何とも言えない味の壁掛けが出来た。『シロアリは天才だ』だと。
日本の林業は「世界一の技術であり芸術」でも有ると言える?木材が出来るのでなく材木を作っているのだ。それを金儲けの為に捨てていく日本の政治家やそれに繋がる国民の心は誇れるものだろうか?この事が林業だけで無く、日本の基幹産業とされる「農業」や「水産業」にも言える。国民の心や生活そのものを歪めているように思える。今の日本人はまさに『今だけ、金だけ、自分だけ』になり、『類人猿を通り越し猿になっている』と。「経済発展第一」政策は『地球より金』『命より金』の『金の亡者』を育てているのでは?もっと大切な物を一杯失って居るのだと思う。小生には自殺行為に見えるが、今、日本の食料自給率は38%で、62%を外国に頼っている。万一何かが起っても自助力は無いに等しい?
学校の教育内容に小学生以上に『英語・株式を教えよ』と言う文科大臣。数学者で米英研究や指導をされた藤原正彦氏はそれを『つける薬がない』と評されたが、文科大臣でしかも裏金問題で反省せず、国民の税金で生きているのに国民への謝罪も無く選挙で再出馬して当選する日本。あぁ、日本が『金の亡者』や『強悪犯罪』の増加で、壊れていく・・・。
昔を知らない若い人達は『それが当たり前だ』と。「核家族化」はそれを伝えにくい。
〈註〉「木材」は切って種々の用に当てる材料の木のこと。
「材木」は建築・機具製作の為に材料として製材した木のこと。

熊野 稔
- 私市山手在住
- 奈良県の三輪生まれ
- 大阪教育大卒
中学の数学の教師 ゴミ問題に関心をもち退職後毎朝散歩がてらゴミ拾い。「モッタイナイ精神」で使える板・材木で木工を始め、教室を開く。地域の高齢化に対して、元気を貰い会おうと、趣味の作品展「頑張っ展ネン」を立ち上げる。
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