67年前 星田原子炉設置反対運動 No.2

くらし
頭の上に大石を吊し、何が安全じゃ

交野革新懇世話人代表 立花勝博

運動開始

 反対運動の中軸をなしたのは、やはり百姓たちであった。それは彼らの土への執着の強さから来るものであり、また、愛郷精神によるものであった。彼らはおのおの役割を決め、反対運動を開始した。しかし、最大の難敵は、彼らの代表である町会議員など、町長の要請で原子炉推進派となり、村人に背を向けていたことである。まず、村人に原子炉の危険性を知ってもらうことが大切なことであった。次に、星田区民大会を開いて原子炉設置についての賛否を取ること。府庁へ反対を陳情すること。町長・区委員たちを説得することをさしあたりの目標とした。教授はさっそく区長に電話で、大事態の勃発であるから区民大会を開いてくれるように申し入れた。「へぇ。へぇ。よろしおま」

 区長はいとも簡単に引き受けた。そして、教授一家はその日から夜も昼もなくなった。教授は毎晩夜を徹して原稿を書いた。

 原子炉の危険性、放射能の人体への影響、世界での原子炉事故とその被害などを、やさしい言葉で分りやすく説明した。「むつかしい」と言って読んでくれなければ徒労に帰すのだ、特にイギリスの友人が知らせて来た二年前のウィンズケールの大事故の情報が大いに役立った。教授がそれをガリ版できり、印刷して配るのは家族。村は七百八十軒、配る。無心に配る。朝早くから配り、気がつくと午後一時すぎ、昼食をとり、次は、どこどこの町は何枚と輪ゴムでくくり、四十八軒の月当番の家々を配って歩くのだ。照る日、曇る日、雨の日、毎日のように配る。

町内会

 「こんなん滅茶苦茶やんけ、俺、反対するわ」プリントを読みながら、今日も村人は賛成だ反対だと言い争っている。星田に予定されるのは、面積は東海村の百分の一なのに、最初から二十倍の原子炉を設置というのです。それに人口密度は東海村に比べ星田は話にならないのです。十数枚たまったプリントを見ながら「こら誰が見ても危ないわ、先生らやっぱりよう調べて村のため思て反対してくれてはんや。わしらも反対せんとあかん」「ええ物やて聞いていたけど、あら嘘や」などと村人達は多く反対に傾いていきました。「近く村民大会を開きます。それまでに町内会を開いて、町として賛成か反対か決めておいてください」、教授の町も町内会が開かれた。さまざまな意見が出された。「反対なんて時代遅れなこというたら、取り残されます。原子炉来たら道も舗装され発展しますよ」「ようなる言うても原子炉へ行く道だけだっせ、村ん中はそのままだ」「そやけど人口増えます。これが発展です」「せやけど、土産物や食堂が出来ますわな」「そんなん殆どよそ者だ。あんたんとこ左前になりまっせ。村とは関係おまへんやろう」「なにしろ放射能は目に見えんから始末に悪い。放射能障害やら癌やら怖いでんがな。なあ」と皆が意見を出し合い、最後に、「とにかくだ。茨木でも、宇治でも断られたようなややこしい物は、持ってきてもらわん方がよろし。安全やったら大阪の真ん中で作ったらよろしねん」と、地主だった町幹事が判断を下すと、「そうです。そうです」と三人を除き、皆が反対することにしたのであった。このように村では各町町内会が開かれ、わき立っていたが、区長は相変わらず「村民大会でっか。いずれ開きまんがな」と言いつつも梃でも動こうとしない。

町長正式受託

 6月28日(日)町長正式受託 

「おーい。えらいこっちゃ。府が原子炉を公式に申し入れて来よんどぉ。町長が正式に受託しょんどぉ。公式で正式や、えらいこっちゃで!」ニュースマンが例によって村中を走り回っている。教授は正念場が来たと思った。ここまで来るには町議会で正式受託を議決しているに違いないのであるが、議事録は見せてくれないし、肝心かなめの星田出身の議員連中が知らぬ存ぜぬの一点張りで、頼りにならぬどころか取りつく島もない有様なのだ。星田にとって未曾有の大事態が発生しているのに、区民の意見も聞かずに、強引に取り行おうとするやり方に教授は無性に腹が立って来た。このまま唯々諾々と従っていては、星田としては悔を千載に残すことになる。それで区民大会を開いて賛否を決めるようにと再度星田区長に申し入れたところ「そらあきません。そんな事したら、わしの立場があらしまへん。あんたも御上に逆ろうたら学校辞めんなりまへんでぇ」

 その夜、原子炉の危険性を分りやすく説明をした文をガリ版で刷り始めた。次の朝、プリントをもって四十七ある町内の当番の家々を回り始めた。プリントにはイラストが描かれていた。原子炉という大きな石を綱で吊るし、その下に区民がいるという図柄で、「頭の上に大石吊して、安全だ安全だと言われても、その綱切れぬ保証はない」と説明書きがついていた。

(次号交野革新懇ニュース139号に続く)

史料・参考文献

  • 交野町略史、寝屋川市誌、枚方市史、四条畷市史
  • 水本村・議会議事録、交野町・議会議事録
  • 原子炉発電を考える妙見坂小学校授業実践のための教材・資料集”えらいこっちゃ”
  • 樫本喜一 関西原子炉交野案設置反対運動を事例に
  • 実録 関西原子炉物語 

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